アルパカストーブTS-77反射板付きをキャンプで3年使った感想

アルパカ+おでん鍋のコラボ

 秋から春にかけて大活躍している韓国製の石油ストーブ「アルパカストーブ TS-77 反射板付きモデル」をキャンプで数十回使った感想をまとめてみました。

 中型2ルームに適した出力、幕寄せできる反射板、朝まで長持ちするタンク容量、安全装置のないシンプルな構造など、アルパカストーブには多くのメリデメがあります。

キャンプで石油ストーブを使う場合、自己責任となる部分が多々あります。火器使用のリスクと正しい知識を持ったうえでご活用ください。

アルパカストーブのメリット

富士山とアルパカストーブ

 アルパカストーブ(以下、アルパカ)は電源のいらないタンク一体型の石油ストーブ。ガソリンスタンドやホームセンターで売っている安価な灯油が燃料です。

 我が家が愛用しているアルパカは2016年に廃番となった旧型TS-77の反射板付きモデル。キャンプで40泊以上使って便利と感じたのは次の6点です。

  1. 大きさに対して火力が強い
  2. 純正の反射板で幕寄せできる
  3. 夕方から朝まで稼働時間が長い
  4. 動作音が限りなく無音に近い
  5. 輸送時の灯油漏れは一度もなし
  6. ダッチオーブンで煮炊き可能

大きさに対して火力が強い

石油ストーブで2ルームに引きこもり

 アルパカはキャンプで人気のあるフジカハイペット(以下、フジカ)よりも出力が高く、ogawaアポロンやSnowPeakトルテュなど中型2ルームテントにピッタリ。

 マイナス5度まで冷え込んだ秋キャンプでも、コット+ホットカーペット+アルパカの組み合わせでシュラフに潜らずともぐっすり眠ることができました。

 とはいえ薪ストーブのように「暑すぎて半袖短パン!」というほどではなく、室内は長袖長ズボン、外に出るときはダウンやフリースを上から羽織る過ごし方です。

11月は石油ストーブの出番

 ランドロックのような大型2ルームテントだと旧型アルパカTS-77だと少し心許ないかと思います。新型アルパカTS-77Aはさらに火力が2割増しとなっており、出力の高さが魅力。

石油ストーブの出力は灯油の燃焼量にある程度依存しますが、テントと地面との隙間や空気の流れも関係しています。

 燃焼効率の観点では燃焼筒が一面赤くなって、上から炎がはみ出さない程度がベスト。最初に芯を一番上まで上げて着火し、徐々に芯を下げてあとは朝まで放置。

アルパカストーブにエコファンを乗せてみる

 石油ファンヒーターのように風を送ったり自動で火力を調節する機能は一切ありません。天板にエコファンを乗せておくと、前面に向けて風の流れができて温かく感じました。

 火力調節は芯の上げ下げで多少はできますが、基本的に火力は一定のままテントのベンチレーションの開け閉めで室温を調整することが多いです。

 就寝時の一酸化炭素中毒が怖いので、テント上部のベンチレーションを常に開放しつつ、テント下部にいくつか通気口を設けるようにしています。

純正の反射板で幕寄せできる

アルパカとコーナンラック

 旧型アルパカには反射板付きモデル・反射板なしモデル・コンパクトモデルの3種類が存在していました。金属製の反射板はリフレクターとも呼ばれています。

反射板があると背面からの風に強い(炎が弱くなりにくい)と言われていますが、フジカの整流リング付きモデルと比べ少し風に弱い気がします。

 反射板があるだけで背面への熱がほぼ遮断されるため、反射板のない対流式の石油ストーブのようにリビングスペースの中央に置かなくても大丈夫。

 反射板の効果は絶大。アルパカの背面を50cm、アルパカの上を100cmほど離せば、ポリエステルの生地が溶けたり燃えたりすることは一度もありませんでした。

幕内に薪を入れてアルパカで乾かす作戦

 もし室内の中央で使おうとするとジカロテーブルやヘキサテーブルで囲むのですが、中央に置いて使う機会があまりなく、リビングスペースの片隅に置いておくことが多いです。

 なお旧型アルパカの純正反射板は簡単には取り外せない仕様です。反射板のない新型アルパカは市販のウインドスクリーン(風防)を改造して自作する方が多いかと思います。

 改造に失敗すると部品が壊れたりするので、DIYに自信がない方は手を出さないほうが無難。旧型アルパカをヤフオクやメルカリで探すか、フジカの反射板付きがおすすめです。

夕方から朝まで稼働時間が長い

アルパカストーブにしゅぽしゅぽで給油中

 アルパカの特徴として長い燃焼時間があります。満タンまで給油すると夕方5時頃着火して翌朝7時頃まで何もいじらずに連続稼働しつづけています。

 週末の1泊2日キャンプであれば自宅で9割ほど給油し、現地でちょうど使い切る感じ。2泊3日の連泊キャンプのときは10Lの灯油タンク+しゅぽしゅぽを持って行きます。

 なおコンパクトモデルはタンク容量が6Lから4Lに減っており連続運転時間も減少しているため、夕方から使い始めると朝食の時間には燃料切れになっているかと思います。

真っ暗闇の中でアルパカを燃やす

 ホットカーペットや石油ファンヒーターのように数時間経つと自動で消えてしまうよりも、何もせずとも延々と燃え続けるほうがキャンプではありがたいです。

 薪ストーブのように数時間ごとに薪を追加したり灰の様子を見たりする手間も必要ありません。ただ、自宅で使うだけなら石油ファンヒーターがコスパ最強。

 気になるアルパカの燃費ですが、自宅で普段使いするにはかなり悪いと思っています。マンションのような気密性の高い部屋だとアルパカは暑すぎますね。

動作音が限りなく無音に近い

今シーズン初の石油ストーブ

 アルパカ燃焼時の動作音はほぼ皆無。薪ストーブの薪が燃える音やセラミックヒーターの送風音などは一切ありません。着火時と消火時に少し音が出るだけ。

 まるで寡黙な職人のような振る舞いです。過去に何度か音を出しながら黒い煙が出て炎が安定しなかったことがあったのですが、理由はどうやら不完全燃焼。

 見た目では気づきにくいのですが、燃焼筒がしっかりはまっておらず傾いていたため、がちゃがちゃいじってまっすぐになると黒い煙は収まって安定しました。

輸送時の灯油漏れは一度もなし

アルパカで薪を乾燥させつつお湯を沸かす

 アルパカで灯油漏れは一度もありませんでした。よほど大きな振動や斜めにしない限り問題なさそう。ただし横倒しにすると必ず漏れる仕様です。

 タンク一体型は多少の振動だけなら灯油が漏れにくい特性があります。ちなみに灯油はホワイトガソリンほど揮発性が高くないので、もしこぼれるとすぐには乾きません。

石油ファンヒーターなどで使われているカートリッジ式の燃料タンクは、車載時の微振動で灯油が漏れ出します。

 オフシーズン(5月~9月)はタンクが空っぽになるまで完全燃焼させてから保管しておきます。灯油が残っているとタンクが腐食して最悪の場合、穴が開いてしまうそうです。

ダッチオーブンで煮炊き可能

アルパカにダッチオーブンを乗せる

 アルパカの上部にサザンポートの七輪用ゴトクをセットすると、ケトルやシェラカップだけでなく、大鍋やダッチオーブンを乗せて調理することができます。

 火力の面ではホワイトガソリンのバーナーには敵いませんが、寒い季節にじっくりコトコト煮炊きするには十分。おでんからもつ鍋まで何でも作れます。

 ゴトクをセットしたまま天板を乗せ、純正の収納ケースに入れて持ち運べるのも便利。12インチのダッチオーブンも乗せることができる強度があります。

アルパカストーブのデメリット

 朝晩冷え込む春キャンプや秋キャンプで使っていると、持っていて良かったと感じることの多いアルパカですが、もちろんイマイチと感じる点もありました。

ガラス筒が割れやすい

アルパカストーブTS-77の内容品

 アルパカは全体的に衝撃には強い構造なのですが、燃焼する芯のまわりにあるガラス筒が熱か衝撃でひび割れてしまいました。

 幸いにもヤフーショッピングで交換パーツを購入することができ一安心。純正のケースにいれて持ち運ぶときはガラス筒を守る緩衝材があると便利です。

 購入時の付属品を見返すと、ガラス筒のまわりが段ボールで固定されており、持ち運ぶときの振動で割れないように保護されていました。捨てたらダメ、ゼッタイ。

細かな作りが海外クオリティ

アルパカに大鍋を乗せて調理中

 アルパカは韓国製。フジカや武井バーナーのようなジャパンクオリティは期待しないほうが幸せになれます。燃料タンクの残量メーターなんて相当いい加減です。

 リペアパーツとして取り寄せたガラス筒は工業製品としてよくできていたのですが、初めから付いていたガラス筒はきちんとフチが加工されておらずイマイチでした。

 アルコールランプと似たシンプルな構造をしており、不完全さを逆手にとって個人で分解したり塗装したり改造したりする方もいらっしゃいます。

コンパクトカーには厳しいサイズ

アルパカストーブの大きさ(車載編)

 純正の収納ケースに入れたときのサイズはそれなりにあります。とはいえ薪ストーブ一式(煙突や幕除けなど)と比べれば相当コンパクトだと思います。

 寒い季節は衣類や毛布がかさばりどうしても荷物が増えるのですが、クーラーボックスをソフトクーラーにしたりして車載スペースを確保するようにしています。

 よりコンパクトにしようとすると武井バーナー(パープルストーブ)が候補になりますが、プレヒートの手間がかかったり燃焼音が盛大だったり若干クセがありますね。

安全装置のメリデメ

石油ストーブ「アルパカ」に点火

 石油ファンヒーターには不完全燃焼防止装置、耐震自動消火装置、給油時消火装置など各種安全装置が付いていますが、アルパカにハイテク装置はありません。

 これをメリットとみるかデメリットとみるかがポイント。キャンプで使うときには振動を感知して自動で火が消える「耐震自動消火装置」は扱いにくい機能と思っています。

 フジカや新型アルパカをキャンプで使ったことのある方は経験あるかと思いますが、ちょっと動かしたり少し体がぶつかっただけですぐに火が消えてしまいます。

アルパカストーブと焚き火のコラボレーション

 幕内で着火すると不完全燃焼時に煙が充満するので、屋外で着火してから幕内に持ち運んで使うことが多いのですが、安全装置がないことで消えずに持ち運べるのが嬉しい。

 再点火の手間や消火時の不完全燃焼による独特の臭いなど、フジカや新型アルパカに付いている自動消火装置は意外とデメリットが多い印象です。

 このあたりの感覚は子供の年齢やご自身のリスク許容度に依存しますので「あれが怖い、これが怖い」と感じるなら、そもそも石油ストーブは使わないほうが無難です。

耐震自動消火装置のない旧型アルパカは廃盤となってからしばらく経っており、希少価値が出てきている可能性もあります。

買って良かったアルパカ

七輪用ゴトクとアルパカストーブ

 アルパカとフジカ。改めてどちらを買うか考えたとき、フジカの出力不足と消火装置がデメリットとなり、結局またアルパカを選ぶような気がしています。

 薪ストーブほど暖かくはありませんが、諸々の手間や荷物の大きさなどトータルで考えると、本格的な冬キャンプ以外なら石油ストーブで十分かなと思います。

 電気がいらず、ある程度壁寄せできて、メンテナンスしやすく、煮炊きもできて、遠赤外線でポカポカ。ほぼ無音で燃え続けるため一酸化炭素中毒にはくれぐれもご注意を。

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アルパカストーブTS-77反射型のオーバーホール。ドライバーやソケットレンチで簡単に分解でき、5シーズン使用した芯の交換も実施しました。セスキ炭酸ソーダとメラミンスポンジで泥汚れや油汚れをキレイに落とすことができました。

納期が早いのもアルパカの良さ

アルパカストーブTS-77の梱包

 フジカは秋になると納期が数ヶ月先となるのが一般的。寒くなってきたから注文しようと思ったら最速でも納期は12月以降…なんてこともありえます。

とある格言「鉄は熱いうちに打て、フジカとナンガは暑いうちに買え」はキャンプ界隈では極めてあるある(^^)

 一方のアルパカは韓国から輸入している割に、輸送に時間がかかっても数ヶ月も待つことがありません。未来マート(既に閉店)で購入したときは1週間程度で届きました。

 2021年現在は株式会社ハピネスのニューアルパカストーブショップがアルパカの最新モデルを取り扱っており、AmazonやYahoo!ショッピングでも販売されています。