RICOH THETAで360度を見渡す星空を撮影してRAW現像する方法

Lightroom Classic CCで全天球RAW現像

 1枚の写真に見渡す限りの景色を収め、VRを楽しめる360度カメラ「RICOH THETA」シリーズ。エントリーモデル「SC」とフラッグシップモデル「Z1」で星空を撮ってみました。

 三脚で地面に固定し、マニュアルモードでシャッタースピードやISO感度を設定したらスマホで遠隔操作。難易度の高いピント合わせもいらず、簡単に星景写真を撮れます。

 画質面でフルサイズ一眼には及ばないものの、軽量コンパクトで持ち運びやすく、THETA Z1ならRAW撮影も可能。やや飛び道具的なアイテムですが、手軽に使えて楽しいカメラです。

RICOH THETA 星空撮影方法

RICOH THETA Z1とTHETA SC

  • カメラ本体
  • 三脚
  • スマートフォン
  • 専用アプリ(無料)

 星空撮影に必要な道具はこれだけ。スマホに専用アプリをインストールし、カメラと無線で接続。三脚に取り付けたら準備完了。三脚は安くてコンパクトなもので大丈夫です。

星空撮影場所の選び方

関東から行きやすい撮影スポット「爪木崎公園」

出典:光害マップ「爪木崎公園」

 小さなカメラで星空を撮るとき大事な要素は撮影場所と撮影日時。おすすめの撮影ポイントは目視で3等星が見える程度に暗く、周囲に高い木々がない開けた場所です。

 その場所がどの程度暗いかはLight Pollution Mapで確認できます。街明かりの影響を避けるため、その地点の暗さだけでなく、なるべく市街地から離れた場所を探します。

沖縄県宮古島市 東平安名岬 平安名埼灯台

出典:公益社団法人燈光会「平安名埼灯台」

 身近な撮影スポットは街灯のない海岸や岬。駐車場や幹線道路から近いとクルマのライトの影響を受けやすく、逆に遠いと夜間の徒歩が危険なので、適度な距離感がポイント。

 近くに構造物があると360度星景写真として映えますが、明暗差が大きい環境だとやや撮影が難しくなります。移動が苦でなければ標高の高い峠の展望台や山頂もおすすめです。

星空撮影日時の決め方

雲の有無はSCWで直前に確認する

 撮影日時のおすすめは、月明かりの影響が少ない新月の前後2日間。月齢カレンダー等で確認し、月が沈んだ時間帯(例えば上弦の月は24時以降、下弦の月は24時以前)も候補です。

 多少カメラの性能が劣っていても、湿度が低く、空気が澄んでいると星がキレイに写ります。一番よく撮れるのは真冬の晴れた夜。真夏は寒くないけど虫多め。春霞や梅雨は苦手。

 雲がかかっていると星がキレイに写らないため、SCWで雲予報を確認し、撮影地の周囲が黒くなっている(黒は雲がない状態、白になるほど雲が厚い状態)ことを確認します。

THETA SCでの撮影手順

  1. マニュアルモードに切り替える
  2. ホワイトバランスを設定する
  3. スマホからリモート撮影

 THETA SCは絞り値を変更できないので、シャッタースピードを60秒、ISO感度を800に設定。ホワイトバランスは色温度指定で3800K(より青くしたい場合は数値を低くする)にします。

試し撮りして星が写らなければISO感度を少しずつ上げ、写真が明るい場合はISO感度を少しずつ下げます。

THETA SCで撮った人造湖と天の川

2019/08/30 北海道幌加内町 朱鞠内湖畔キャンプ場 – Spherical Image – RICOH THETA

 上の写真は北海道幌加内町、真夏の朱鞠内湖畔キャンプ場で撮影したもの。湖畔の街灯や約20km離れた名寄市街地の影響が大きいものの、南の空に天の川がうっすらと写っています。

 アプリで多少は星を強調処理できますが、THETA SCはセンサーが小さいため高感度撮影時にノイズが乗りやすく、JPEG形式なので画像処理には不向き。SC2やVも同様です。

THETA Z1の設定手順

RICOH THETA Z1をアプリから設定変更

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 センサーが大きく、RAW形式で撮れるTHETA Z1は絞り値も変更できるため、開放のf2.1に設定。シャッタースピードやISO感度、ホワイトバランスはTHETA SCと同じです。

THETA Z1で撮った灯台と天の川

RICOH THETA Z1 サンプル 灯台と天の川 #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA

 上の写真は沖縄県宮古島市、東平安名岬にある平安名埼灯台で撮影したもの。10秒ごとに灯台から交互に来る赤と白の光が強烈ですが、ISO感度を640にしても天の川が写っていました。

 場所の違い、湿度の違い、カメラの違いなど差が出た理由は色々ありますが、RAW形式で撮影しAdobe Lightroom Classic CCで現像&スティッチングしたことが最も大きい要因です。

Lightroom CCでRAW現像

 THETA Z1からパソコンに転送した画像をLightroomでRAW現像(JPEG化)する方法は、一眼レフなどで撮った星空写真とほぼ同じ。大まかな流れは以下の通りです。

  1. プロファイルをAdobe風景もしくはAdobe標準に変える
  2. 色収差を除去(倍率色収差補正)を有効化する
  3. コントラスト、ハイライト、シャドウ、明瞭度、かすみの除去を設定する
  4. 段階フィルターで地上部分(地平線より下)の露光量を下げる
  5. 写真全体の明るさ(露光量)を調整する
  6. 必要に応じて輝度ノイズとカラーノイズを軽減する
例ではAdobe風景、露光量+0.50、コントラスト+40、ハイライト+80、シャドウ-80、明瞭度+40、かすみの除去+30、輝度ノイズ軽減40、カラーノイズ軽減50を選びました。

Lightroom Classic CCで全天球RAW画像に段階フィルターを適用

 撮影した画像は円周魚眼レンズで撮影した2つの写真が並んだデュアルフィッシュアイ形式。段階フィルターを地平線に合わせて斜めに設定し、露光量-2.00で大きく減光させました。

 地面は暗く、星空は明るく見えるように明暗差を出して強調しています。段階フィルターを使うときは地平線の上下が滑らかに変化するように設定すると不自然さが減るかと思います。

 2020年8月現在、THETA Z1のレンズプロファイルは提供されていませんが、スティッチング前提だと周辺光量補正とゆがみ補正が必要ないため、ほぼ影響ありません。

まとめ

フラッグシップモデル「RICOH THETA Z1」

photo by RICOH THETA Z1

 写真を拡大したときノイズが目立つのは、残念ながらカメラ性能の限界。フルサイズ一眼+広角単焦点レンズとは何もかもが異なるので、同レベルの写真を撮るのは難しいのが現状です。

Lightroomで編集したRAW画像はスティッチングプラグインを通して出力し、公式アプリで開くことで360度全天球星空写真に生まれ変わります。

 THETA Z1は従来機種よりもセンサーが大きくなり、高感度に強くなったことで星空撮影も十分こなせました。天の川や夏の大三角、冬のダイヤモンドなど思い出記録にもおすすめです。