星空撮影に適したフルサイズ用のレンズは10万円以上がほとんど。お手頃価格で選ぶなら、APS-Cセンサー用のサードパーティー製レンズが有力候補になります。
これまでに使用/試用してきたレンズの中から、10万円以下で購入できて絞り開放からそれなりに使える「星空撮影におすすめのAPS-Cセンサー用レンズ」を紹介します。
この記事の目次
APS-C星空撮影レンズ3選
△:メーカー純正マウントアダプター
▲:サードパーティー製マウントアダプター
×:フランジバックの関係で取り付け不可
APS-Cセンサーを搭載したデジタル一眼カメラはミラーレスのSony EマウントとFujifilm Xマウントに勢いがあり、対応レンズも徐々に増えてきています。
開放から使えるAPS-Cレンズ選び
- 開放f値が超広角はf2.8以下、広角はf2.0以下
- 新品で実売税込10万円以下
- 焦点距離16mm以下(フルサイズ換算24mm以下)
- 開放でもコマ収差(特にサジタルコマフレア)が目立ちにくい
- 魚眼レンズは除く(用途が限られるため)
2021年4月時点で上記の条件に合致するAPS-C用レンズ3本を選びました。歪曲収差と周辺減光はRAW現像時のデジタル補正を前提にしています。
Samyang 10mm f2.8
photo by ケンコー・トキナー
Samyang 10mm F2.8 ED AS NCS CSはフルサイズ換算15mmの超広角レンズ。レフ機用をミラーレス用にも転用しており対応マウントが豊富です。
- 単焦点(ズーム不可)
- マニュアルフォーカス専用
- 花形レンズフード取り外し不可
- フィルター取り付け不可(出目金レンズ)
- 一部マウントで電子接点あり
- 580g(ニコンFマウント)
- ゴムシーリングなし
- 実売価格50,000円前後
コマ収差は思いのほか少ない
換算15mmの画角かつf2.8の明るさが5万円前後で得られるのがすごいですね。上の写真は真冬の浩庵キャンプ場で本栖湖と富士山を撮ったときの左上100%。
シャッタースピード20秒なので少し流れましたが、コマ収差は目立たない気がします。f2.8で星が流れずに撮るには赤道儀で追尾撮影した方が良い結果を得られそうです。
強い光が入ると難儀するかも
- 逆光でゴーストが目立つ
- 像面湾曲が目立つ
- 片ボケあり(おそらく個体差)
超広角レンズなので逆光はやや苦手です。コントラストの低下はあまり感じませんが、太陽のような強い光を入れたときのゴーストはなかなか激しいかも。
摩訶不思議なEXIFデータの残り方
Fマウント版には電子接点があり、SモードやPモードも使用できました。ただD7500で撮ったときのEXIF情報のレンズ名が「14mm f/2.8-1.4D」と記録されていました。
サードパーティー製のレンズは電子接点の通信を解析(リバースエンジニアリング)して作っており、この辺りに完璧さを求めるのは酷かもしれませんね。
Samyang 12mm f2.0
photo by ケンコー・トキナー
Samyang 12mm F2.0 NCS CSはフルサイズ換算18mmの超広角レンズ。ミラーレス専用となっており、とても軽量コンパクトなレンズです。
- 単焦点(ズーム不可)
- マニュアルフォーカス専用
- レンズフード取り外し可
- フィルター径67mm
- 電子接点なし
- 260g(富士フイルムXマウント)
- ゴムシーリングなし
- 実売価格35,000円前後
APS-Cミラーレスのド定番レンズ
上の写真は冬の精進湖で撮ったときの左上100%。細かく見ればツッコミどころ満載ですが、換算18mmの画角かつf2.0の明るさが3.5万円前後で得られるのがすごいですね。
フィルター径が小さいのでソフトフィルターや光害カットフィルターも安価で揃えやすいです。以前ご紹介した「10万円以内で揃える撮影道具」でも採用させていただきました。
電子接点なしは撮影後の管理が難しい
- どのレンズで撮った写真かわかりにくい
- どのF値を設定したものかわからない
- 片ボケあり(おそらく個体差)
- 無限遠が出ない(おそらく個体差)
電子接点がないため、撮影後にパソコンに取り込んでもEXIF情報があまり残っていません。特にF値がいくつだったか後からわからないのは結構不便と感じています。
三脚に固定した状態での撮影であれば絞り開放でしか使いませんが、赤道儀に乗せたときは多少絞ることもあるので、別途記録しておくなど手間をかけた対策が必要です。
Tokina 14-20mm f2.0
photo by ケンコー・トキナー
Tokina AT-X 14-20 F2 PRO DXはフルサイズ換算21〜30mmの広角レンズ。範囲は狭いですが、単焦点並みの明るさでズームできる、かなり貴重な存在です。
- ズーム可能
- オートフォーカス対応
- レンズフード取り外し可
- フィルター径82mm
- 電子接点あり
- 735g(ニコンFマウント)
- ゴムシーリングあり
- 実売価格70,000円前後
マウントアダプターでミラーレス可
一眼レフ用のレンズですが、ミラーレスも各種マウントアダプターを挟むことで対応しています。例えばZマウントはFTZ経由で動作に問題ないことが発表されています。
開放絞りでの写りはf2.0通しのズームレンズであることを考えると大きな不満はありません。シーリングゴム付きで耐候性にも配慮されていて安心感があります。
オートフォーカス対応で汎用性が高い
- 逆光にはやや弱い
- かなり重い(特にマウントアダプターだと)
- AF/MFの切り替えが独特
- オートフォーカスは遅くて音が大きい
オートフォーカスにも対応しており、広角ズームレンズとして普段使いもできます。特にトキナーブルーと呼ばれる青が綺麗に出るため、空を入れた写真に効果大。
トキナーのレンズは全般的に逆光に弱い特徴があります。AF/MFの切り替えがクラッチ式で、たまに引っ掛かりを感じることがあり、スムーズとは言い難い欠点も。
まとめ
APS-CミラーレスならSamyang 12mm f2.0、APS-C一眼レフならTokina 14-20 f2が特にイチオシです。開放絞りから使える明るいレンズは強い味方になるはずです。
小さいセンサーでもレンズと撮影環境が良ければ(趣味レベルなら)普通に撮れます。上を見ればキリがありませんが、必ずしもフルサイズに拘る必要ないかと。
ただ、高感度ノイズは避けられません。ノイズの出方が気になる場合は、赤道儀を使って追尾撮影するか複数枚をコンポジット合成すると、クオリティを上がることができます。